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能登から世界へ。漁師に愛された伝統娯楽「ごいた」

能登が生んだ
和製ボードゲームの傑作

今、能登町で生まれたひとつのゲームが世界中で注目されています。

その名は〈ごいた〉。将棋の駒とよく似た竹製のコマを使って、2人1組で相手方と得点を競い合う頭脳ゲームです。

運と戦略が絶妙なバランスで交差する和製ボードゲームの傑作。シンプルながら奥の深いこの能登町の伝承娯楽が、いまや海を越えて、世界中のボードゲーム愛好家たちの間で競技されているのです。

〈ごいた〉が考案されたのは明治時代。能登町宇出津の商家「布浦」の出である布浦清右エ門と、宇出津の棚木に住んでいた勝負師の三右衛門によって作られました。

夜釣りに使われる集魚灯の考案や、能登で初めて造花技術をもたらすなど発明家でもあった清右エ門。無類の将棋好きであった彼は、越中・越後にあった将棋系の遊びにヒントを得て、将棋仲間の三右衛門とともに〈ごいた〉を作り上げました。

それから100年余。宇出津という限定された地域だけで親しまれてきた伝承娯楽が、なぜ世界中で遊ばれるようになったのか。ごいた保存会の役員であり、自身もトップレベルの腕前を持つ佐野勝二さんにお話をうかがいました。

「ごいたは大敷網漁を終えた漁師らが余暇を利用して遊んだ娯楽のひとつ。宇出津の人間なら信玄袋にごいたの駒を入れて持ち歩くのが当たり前だったし、浜辺や風通しの良い日陰にゴザやムシロを敷いて楽しむ姿は、宇出津ならではの夏の風物詩でもありました。ところが、年々〈ごいた〉を嗜む人が減って、路地裏などで見かけることも少なくなってしまった。そんな状況を危惧して誕生したのが〈ごいた保存会〉。2007年から毎年6つの大会を開催し、全国からも参加者が集まるようになったんです」
同年には、愛好家の有志らが〈ごいた〉のカードゲームを製作。ドイツのエッセンで開催された世界最大のボードゲームの祭典「シュピール’07」や、オーストリアで開催された「シュピーレフェスタ」などに英語版のカードを持ち込み〈ごいた〉の普及を図ることに成功しています。

現在では、ヨーロッパを中心に世界各国の言語や点字が表示されたカードなども製作。また、スマートフォン上で〈ごいた〉が遊べるアプリも開発され、SNSなどを通じて愛好家が増加中。なんと全国のごいた人口は1万人に上るといわれています。

強さの証となる
番付表の存在

全国的に〈ごいた〉が普及したもうひとつの理由として、番付表の存在が挙げられます。

「番付は十両から始まり、予選16位以内で幕内入り。それ以降は大会後に行われる番付編成会議によって地位が上下します。この番付が競技者のモチベーションにもなっているようですね」と佐野さん。

もちろん横綱になるのはそう簡単ではなく、三役の位置で2場所連続して優勝するか、それと同等の成績を収める必要があります。また、3場所連続して予選落ちすると横綱の地位から陥落するなど、番付上位を維持するためにはそれなりの実力が求められます。

番付を下げないよう競技者が日頃から鍛錬することで、結果的にレベルの底上げとなった番付制度。また、それと同時に東京、大阪、神奈川、長野、宮城と、全国各地に支部が誕生し、大会が行われる期間は各地から数十人規模で参加者が能登町に集まるようにもなりました。佐野さんはこう語ります。

「県外から参加に来られる方たちと話していると、大会で好成績を残すだけではなく、宇出津の人間と触れ合うことを楽しみしているのが伝わってくるんです。今度はどこでごはんを食べようか、どこを観光して帰ろうか。そんな話をしながら能登町に来ること自体を楽しんでもらっているのがうれしいですね。女性の競技者も年々、増えているんですよ」

大会ごとに能登町を訪れる競技者たちは、そのたびに新たな発見をし、町の人との交流を深めています。いきつけの店が少しずつ増え、顔を覚えてくれた地元の人たちからは「また来たのかい」と歓迎される。シャイだけど情に厚い能登人との本当の付き合いはそれから。きっと今まで知らなかった能登町を、彼らが教えてくれるでしょう。

初めての地で新しい経験をするだけでなく、同じ場所に何度も訪れて発見を積み重ねるのも旅の醍醐味。きっと〈ごいた〉の愛好家たちは、四季折々の表情が豊かで、文化や伝統に独特の奥深さがある能登町だからこそ、こうして何度も何度も大会に参加しているのに違いありません。

大事なのは
相手との駆け引き

佐野さんと会うためにお邪魔したのは宇出津港の近くにある〈ごいたの館〉。そこで1時間ほど〈ごいた〉の手ほどきを受けたので、簡単なルールを説明したいと思います。

  • 王や金などの文字が書かれた8種32枚の駒を4人に均等に配る
  • 卓を囲んだ向かいの人同士でペアになって戦うチーム戦。それぞれが持ち駒を2枚ずつ順番に出して、ペアのどちらかが全ての駒を出し切ればその勝負は勝ち。
  • 最後に出した駒の種類が得点となり、最終的に150点に達したペアの勝ちとなる。
  • 持っている駒を必ずしも出す必要はなく、相手の持ち駒を読みきったり、味方が上がれるようにサポートに徹したり、そういった駆け引きが勝負の肝となる。

トランプでいうとスピードに似たゲームというと分かりやすいかもしれません。

詳しいルールはこちら

パチッといい音を響かせて打ち出す、攻めの駒と受けの駒。駆け引きと読み合いを繰り広げながら、大人たちが子どものように夢中になる。もし、大会期間中に能登町を旅することがあれば、ぜひ目にしてみたい光景です。

また、原則として競技中の会話は禁止。出す駒にメッセージを込めて、味方とコミュニケーションを図る必要があります。仲間のことを考えながら、二人三脚で勝利を目指す。〈ごいた〉が思いやりのゲームといわれているのも、そうした理由があるからなんです。

ごいたにまつわる
近隣のスポット

最後に〈ごいた〉にまつわるいくつかのスポットを紹介したいと思います。

ごいたの館
宇出津港に面した場所にある〈ごいた〉の道場。ここには専用の盤や竹駒などが常設されていて、初心者への指導が行われているほか、〈ごいた〉にまつわる歴史や資料、グッズなども展示されています。

モニュメント
2018年に宇出津港いやさか広場に完成したモニュメント。〈ごいた〉のシンボルでもある赤字の「し」が入った五角形の駒が象られていて、記念撮影スポットにもなっています。

ぬのうら百貨店
考案者の布浦清右エ門が家業としていた百貨店。こちらではお祭り用の和紙や切り絵で作る宝来のほか〈ごいた〉の駒なども売られています。

数馬酒造
能登を代表する日本酒〈竹葉〉を醸す、宇出津の酒蔵。こちらでは大会に参加するたびに蔵を訪ねてお酒を購入する愛好家との縁で生まれた〈ごいたラベル〉のお酒が売られています。

ちなみにコロナの影響で当面は開催中止となりますが、どの大会も遊び方さえ知っていればだれでも参加できるとのこと。

地域に伝わる娯楽をきっかけに、その土地の魅力と奥深さに気付き、どんどん虜になっていく。そんな旅のカタチがあってもいいのかもしれない。

記:吉岡 大輔

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