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日本三大イカ釣り漁港・能登小木港と”イカ”の素敵な関係。

寿司、天ぷら、煮物、珍味など、日本の食卓に欠かせない魚介といえば「イカ」。2020年に水産庁が発表した統計調査によると、日本では一人当たり年間0.4kgのイカが消費されていて、これはサケ、マグロ、ブリ、エビに続くものだそうです。

考古学的な視点から縄文時代には食されていたと考えられ、五千年という長い歴史にわたって日本人の豊かな食生活を支えてきたこの海の生き物ですが、能登町が日本有数のイカの名産地であることはあまり知られていません。では、なぜ能登町がイカの名産地と言われているのか。そして、地元ではどんなイカ料理が食され、イカにまつわる文化が根付いているのか。今回は能登町とイカとの関係に迫ります。

能登町とイカ釣りの歴史

能登町小木は、能登半島の北東部に位置する人口2,500人ほどの小さな港町。じつは能登町で水揚げされるイカのほとんどが、この波穏やかな富山湾に面する能登小木港(以下、小木港)のものになります。最盛期の年間漁獲量は約3万トン。近年はさまざまな問題によって漁獲量が減っていますが、それでも青森県の八戸港、北海道の函館港と並ぶ「日本三大イカ釣り漁港」として、毎年多くの良質なイカを出荷しています。

小木でイカ釣り漁が始まったのは明治時代。古くから天然の良港として賑わっていた小木港は、船出の風を待つ「風待ち港」として知られ、北前船などの船舶がよく寄港していました。それまで二人乗りの小舟でイカ釣りを行っていた小木の漁師たちは、数千隻にもおよぶ入港船から最先端の情報を入手。ほどなくするとその知識と漁の腕を活かし、北海道へと新しい漁場を開拓していくことになります。

小木港

小木で初めてエンジン付きの船が導入されたのは大正時代。「小木丸」と命名された木造の和洋折衷型発動機船は、タイやアラ漁などに出漁する中で、イカ釣り船団の曳船としても活用されていました。昭和時代に入ると99トンのイカ釣り専用船を中心とした漁は最盛期を迎え、一隻当たりの平均水揚げ高が1億円を超えるなど、全国トップクラスの漁獲量を誇るイカ釣り船団の基地として注目を浴びます。

現在、小木のイカ釣り船が主戦場としているのは、能登半島沖にある「大和堆(やまとたい)」。小木の漁師たちが半世紀にわたって開拓してきたこの堆は、餌が豊富で魚が集まりやすく、イカやカニの好漁場としても知られています。しかし、近年は外国漁船による無秩序な乱獲が問題化。安定した漁業ができるよう、国際的な管理体制が求められています。

ここまで小木のイカ漁の歴史を振り返ってきましたが、一口にイカと言っても地球上には500種以上のイカが生息しています。石川県沿岸で記録されているイカは12種類。よく見られるものとしては、スルメイカ、アオリイカ、ケンサキイカ、ヤリイカ、コウイカなどが挙げられます。その中でもっとも食べられているのがスルメイカ。おもに生鮮として出荷されるほか、スルメや塩辛、さきイカなどの加工品としても使われています。

そして、そのスルメイカを小木で開発された一尾凍結法によって凍らせたのが、「小木イカ」のブランド名でも知られる小木の船凍イカです。獲れたてのイカを船内で急速冷凍させるため鮮度は抜群。通常イカは釣った直後が透明で、その後は茶色から白色へと変化していきますが、船凍イカは高水準の鮮度を保った濃い茶色のまま。船内で箱詰めまでされ、港に着いた時点で冷凍車に運び込まれ出荷されていきます。

もともとイカは水分量が少なく、冷凍しても食感や味が劣化しづらいのが特徴。スーパーなどで一尾ずつ個包装されたイカを購入できるため、家庭で消費するにも使い勝手が良く、一尾凍結法の生産が本格化した1980年以降、小木の船凍イカは食卓に欠かせない食材としてイカの人気を支えているのです。

小木の船凍イカまた、能登町では沖合や遠洋で行われるイカ釣り漁のほかにも、能登沿岸を回遊するスルメイカを擬似餌によって一杯ずつ釣り上げる、小型イカ釣り漁船による漁も行われています。時期になると日本各地から数百隻の船が集結。水平線にゆらめく幻想的な漁火は、能登の夏の風物詩にもなっています。

集魚灯を光らせた漁船

食べて、学べるイカの駅

そんな小木イカの魅力を、より深く堪能できるのが「イカの駅つくモール」。2020年、能登半島国定公園内の九十九湾にオープンした、能登町の情報発信基地です。九十九湾といえば、日本百景にも選ばれている能登有数の景勝地。その景観の美しさも相まって、毎年多くの観光客が訪れています。

まず目を奪われるのが、スルメイカをモチーフにした「イカキング」。高さ4m、全長13m。子供が遊べる大型遊具として、写真映えのする巨大メニュメントとして、今ではつくモールのシンボル的な存在となっています。実際にこのイカキングを目的に訪れる人も多く、2021年に設置されて以降は来場者数も右肩上がり。その経済効果は数億円にも上ると言われています。


併設するレストランとカフェでは、船凍イカを使った御膳や丼、いしり(イカの魚醤)のピザ、イカスミソフトなど、バラエティ豊かなメニューを提供。なかでもイカ刺しや天ぷらなどイカづくしの「こっしゃえる御膳」は、イカを知り尽くした料理長の自信作とのこと。船凍イカならではの上品な甘味と、ねっとり濃厚な旨味が口の中に広がっていきます。

また、レストランには水槽も設置されていて、九十九湾の生き物たちが泳ぐ姿を見ることもできます。

船凍イカのいしる醤油漬け丼イカ漁展示コーナーでは、集魚灯などのイカ漁にまつわる備品や、イカ漁の歴史を紹介するパネルを展示。なぜ、能登町がイカの名産地と呼ばれるのか、楽しみながら学ぶことができます。

展示コーナー魚介類の中でも、加工品として消費される割合が極めて高いスルメイカ。ここつくモールも「イカの駅」と銘打つだけあって、加工品や調味料、お酒、アクセサリーなど、全国に類を見ない種類のイカ土産が取り揃えられています。しかしその中には、初めて目にするような郷土色豊かな商品もチラホラ。

次のテーマでは、普段なかなか買うことのできない、イカの町・小木ならではのお土産を紹介します。

つくモールのお土産7選

いかの鉄砲焼き

小木名物の船凍イカは、一尾丸ごとパッケージしたものから、調理・加工が施されたものまで、さまざまなタイプの商品が販売されています。なかでも人気を集めているのが、胴体に生姜味噌を詰めて焼かれた鉄砲焼き。焼いていると鉄砲のような破裂音がするため、そう呼ばれているそうです。甘辛い味わいとプリッとした食感で世代を問わず大人気。オーブントースターで焼くだけなので調理も簡単です。

鉄砲焼き

いしり(イカ魚醤)

いしりとは、奥能登に古くから伝わる魚醤のこと。真イカの内臓を長期発酵させることで生まれる深い味わいが特徴です。刺身のつけ醤油、煮物や鍋物の調味料として使われるほか、地元では「いしりの貝焼き」などの郷土料理にも用いられています。いしり自体は石川県内であれば購入できるお店は少なくありませんが、5〜6種類もの商品を取り揃えているのは、イカの駅ならではといえるでしょう。

いしり

イカの甘酢漬け

地元の祭りや家庭などで親しまれてきた小木地区のソウルフード。船凍イカの胴体にキュウリ、ニンジン、ダイコン、セロリなどの野菜とゲソを詰め、甘酢や昆布のだしに漬け込まれたものです。甘味と酸味のバランスが良く、イカと野菜の異なる食感が楽しめるのが特長。日本酒との相性も抜群です。

いかの甘酢漬け

竹葉 いか純米

イカとの相性を追求した純米酒。仕込み水は能登の海洋深層水を、発酵には能登の海藻から抽出された酵母を使用しています。手がけるのは能登町宇出津に蔵を構える「数馬酒造」。メープルシロップやハチミツを思わせるふくよかな香りと、全体的にしっかりと重心を感じる味わいで、イカのねっとりとした甘みや酸味とのペアリングが楽しめます。

いか純米

能登いか煎餅

小木イカをふんだんに使った一番人気の商品。イカの豊かな風味を生かすため、生イカと干したスルメの2種類を使用するこだわり。二度焼きすることでイカの旨味をギュッと閉じ込め、食感の良さを引き出しています。

いか煎餅

イカそぼろ

柔らかく蒸したイカを、汁ごと甘辛く煮たイカそぼろ。胴体だけでなく、刻まれた耳や足も入っていて歯応えがとても豊か。食べ方はレンジでチンして、ごはんやパスタにかけるだけ。ほかにも麻婆豆腐の挽き肉の代わりに使ったり、煮汁ごとカレーに入れたりと、和洋を問わずさまざまなアレンジが楽しめます。

イカそぼろ

イカピアス

スルメイカをモチーフにしたピアス。シンプルなデザインでコーディネートがしやすいと評判の、イカをモチーフにしたピアス。つくモールでは、ほかにもテーブルウェアやアクセサリーなど、さまざまなアイテムを販売しています。

イカピアス

能登町に伝わるイカ文化

大正時代よりイカ漁が盛んに行われてきた小木では、鉄砲焼きや甘酢漬け以外にもさまざまなイカ料理が伝統的に受け継がれています。たとえば地元では「醤油イカ」と呼ばれるイカの沖漬けは、釣り上げたイカを船上で生きてるうちに醤油に漬け込んだもので、その昔は沖に出た船を待ちわびる人がいるほど人気の品だったと言います。

能登の方言でイカの口を意味する「メガラス」は、コリコリとした独特の食感が人気の珍味。イカ1杯からひとつしか取れない希少な部位で、おもに串焼きなどにして食べられています。また、白菜の古漬けとイカに、ゴロと呼ばれるイカの内臓を加えて炊いた「ゴロ炊き」も、昔ながらの家庭料理として親しまれています。

メガラス能登町ではイカをさばいたり刺身にしたりする際、包丁ではなく「マキリ」と呼ばれる刃物を使う人が多いそうです。マキリとは、アイヌ民族が愛用していた短刀をルーツとする漁業用包丁のこと。握りからすぐ先が刃になった形が特徴で、イノシシを一頭解体しても刃こぼれしないほど丈夫で長持ちします。船の上で網を固定するひもを切ったり、網に絡んだ障害物を外したりするのがおもな用途ですが、能登の漁師たちはこれを使って魚もさばきます。

また、能登町宇出津の「ふくべ鍛冶」で製作される「イカ割き包丁」も知る人ぞ知る逸品。本来はイカを切るために生まれた包丁でありながら、その切れ味と使い勝手の良さから地元では万能包丁として重宝されています。

ふくべ鍛冶から車で5分の場所にある「うみとさかなの科学館」は、海や魚の不思議をさまざまな展示によって紹介する体験型施設。ここではイカの生態やイカ釣り漁の歴史を、科学的な視点で学ぶことができます。見学は無料。本物のスルメイカを使った「いかとっくり工作」や「ガラス玉編み込み工作」も人気です。

うみとさかなの科学館(石川県海洋漁業科学館)小木港では、毎年5月にイカのお祭り「イカす会」が開催されています。1988年にスタートしたこのイベントは、朝獲れイカのつかみどりやイカダレースなどの催しのほか、県漁業調査船「白山丸」によるイカ釣り漁業体験航海、イカ博士によるイカの解剖ワークショップなど、イカの町ならではの企画が盛りだくさん。漁港内では魚介の炉端焼きが振る舞われるなど、小木港に水揚げされた新鮮な海産物を味わうこともできます。2020年以降は開催中止が続いていますが、コロナ禍の沈静化によって来年以降の復活が期待されています。

イカす会
能登町で本格的なイカ釣り漁が行われるようになってから百余年。ときには大不漁に見舞われるなど決して順風満帆ではありませんでしたが、パイオニア精神あふれる小木の漁師たちによって、今では町全体にイカを釣り、食する文化がしっかりと根付いています。

「雪降れどイカ凍れども小木の冬は忘れがたかり」

この冬は、奥深き小木イカの魅力を堪能しに、能登町を旅してみてはいかがでしょうか。

 

参考文献:イカのほん(能登里海教育研究所)、イカ漁展示コーナー(イカの駅つくモール)

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