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家族で楽しむ九十九湾

“未知のもの”と共にあること

「子猫くらいの大きさのアメフラシが、春先になるとドン、ドンッと海中のあちこちにいるのが見えたりするんですよ」
のと海洋ふれあいセンター・普及課の逹さんがさらっと教えてくれた一言を、思わず二度聞きしてしまった。「ね…猫くらい、ですか…!?」

アメフラシといえば、巨大化ナメクジのような海の軟体生物。私にとって、海の“得体の知れなさ”を象徴するような生物でもある。それがネコ大のサイズにまで成長してそこに在る海とは。。
人間とは姿形も違えば、意思疎通だってできない。けれど、確かに私たちは同じ地域で同じ時間を生きている。「人の間」と書いて“人間”なわけで、確かに人と接し続けることで私たちの社会性や協調性が成り立っている。けれど、人間だけと接しているのも、きっと片手落ちなんだ。

九十九湾の海辺を散策していると、ふとそんなことに想いを巡らせている自分に気がつく。なんだか懐かしいこの感覚、世界の不思議に目を見開いていた、小学生くらいに戻った気分。
今回は、子どもはもちろん、大人も童心に戻ってたのしめる、九十九湾界隈をご紹介。

透明度が高い九十九湾。魚や海藻がクリアに見える。

海の学び舎「のと海洋ふれあいセンター」

まず訪れたのは、九十九湾に隣接して佇む「のと海洋ふれあいセンター」。“海の学び舎”をテーマにした施設で、子ども達の海洋教育や独自の調査・研究に力を入れている。学校などの団体の受け入れをはじめ、もちろん一般の人がふらりと立ち寄ることも可能。この日も、夏の終わりを惜しむたくさんの親子連れで賑わっていた。

入館してすぐの展示室では九十九湾や能登半島の海の特徴についてわかりやすく解説されており、水槽には実際に九十九湾に生息する生き物達の姿を見ることができる。

「のと海洋ふれあいセンター」外観

展示室

九十九湾で見られるアカメバル

「この海は透明度がとても高いんです。普通なら雨が降った後は数日は濁っているんですけど、九十九湾界隈は潮通しが良いからか、翌日には復帰していることも珍しくありません。なので、散策しているだけでも磯の生き物や水中の魚を容易に見つけることができるんです」。そう話すのは、今回案内してくださったのと海洋ふれあいセンター・普及員の逹さん。

施設の裏手には青い海がのぞいている

大喜びで海へとズンズン下って行く娘

“発見”に満ちた、磯の散策路

センターのすぐ背後には透明度の高い浅瀬に整備された散策コースが続く「磯の散策路」が。散策路の一部は「ボードウォーク」に整備されているので、車椅子やベビーカーでも利用できる。逹さんの言葉どおり、歩いているだけでも小さな魚の姿を確認することができた。散策路だけでなく、海に下りて行くことも可能で、施設で借りることができる「箱メガネ」を手に海中の生き物を探す親子の姿もちらほら。子どもでも膝下くらいまでの深さのところが多ので安心して遊ばせることができる。

ただ、海に入るときは「服装に注意が必要」とのこと。「貝類もたくさんいるので、ビーチサンダルといった露出の多い履物だと足を切ってしまうことがあります。濡れてもいいスニーカーや、マリンシューズなどをご持参いただくことをおすすめします」(逹さん)

磯の散策路。ベビーカーでも通行できる「ボードウォーク」

施設で貸し出しされている「箱メガネ」

館内で展示されていたおすすめの観察スタイル

「九十九湾は四季折々に表情が変わる海です。海で見られる生き物はもちろん、海藻も季節によって植生が変わってくるんですよ」と逹さん。海にも四季がある、という言葉はなんだか新鮮に響いた。山や森といった陸上の自然の移ろいは分かりやすいけれど、いつ見ても変わらないように見えていた海の中でもダイナミックな変化が起こっていたなんて。

「春先にアメフラシの姿が見えるころにはモズクが繁茂し、梅雨にはボウアオノリ、夏には対馬海流にのってやってきたオヤビッチャやハリセンボンといった南の海の生き物も。冬には岩場がイワノリ類によって真っ黒に覆われます」。そんな四季の変化を感じてもらうために、同センターでは「ヤドカリ学級」として、予約制の観察・実験教室を毎月一回開催。その他にも夏季限定で開催される「体験スノーケリング」といった教室も。普段は気づけないような海の発見に満ちているので、こちらもぜひチェックを。

オヤビッチャ

ハリセンボン

天気がすぐれない日は、施設内の「海の自然体験館」にて手作り体験もできる

九十九湾を体感、遊覧船クルーズ

磯の散策路でたくさん遊んだ後は、のと海洋ふれあいセンターから車で数分の「イカの駅つくモール」でお昼ごはん。親は船凍イカ丼、娘はお子さまランチをいただいてご機嫌になったところで、いざお楽しみの遊覧船での湾内クルージングへ。イカの駅つくモールに発着する遊覧船「イカす丸」は4月~10月までの間、毎日1時間に一本運行している(10:00〜16:00)。

ネーミングもイカした「イカす丸」

「イカす丸」には海中を眺めることができる席も

「リアス式海岸」という特異な地形の九十九湾。数多くの大小の入江があることから“九十九”の名がついたとされるほど複雑な地形から、台風が押し寄せてもほとんど波が立たず、湖面のような静かさを奇跡的に保っているという。

九十九湾は氷河期の終わりには深い谷と尾根によってなる山麓部だったそうで、それが一万年前にはじまった地球規模の温暖化と地殻変動による陸地の隆起によって海水面が上昇し、このような珍しい姿の湾となったとか。その壮大な時間スケールに想いを馳せるのも九十九湾の楽しみのひとつ。

約40分の遊覧船の旅のおともに、透き通った九十九湾を思わせる「つくもサイダー」

神秘的なエメラルドグリーン

岸を離れてから、すこし進んだ頃に見えて来たのが、湾の中心に位置する「蓬莱島」。常緑樹の緑と、ブルーの海のコントラストが美しい九十九湾のシンボルのひとつ。

島の頂上には祠があるそうで、古くから信仰の対象となっていた島。人を寄せつけぬかのように鬱蒼と繁る樹木の存在感もあり、船から眺めているだけでも厳かな気持ちに。

九十九湾のシンボル・蓬莱島

クルーズの途中で船乗員さんによる、お楽しみの餌付けタイムが設けられていて、海面にサッと餌が撒かれると、たくさんの小魚が集まってくる様子を見ることができた(これには子どもも大喜び!)。深いエメラルドグリーンのその海は、海上からはどれくらい深いのか想像がつかないけれど、透明度が高いので水面近くに魚がやってくるとその姿をはっきりと確認することができる。

手慣れた様子の船乗員さん

この日はアジと、スズメダイ、そしてプカプカと一匹フグも発見した

次々と変わる景観に、あっという間に過ぎ去った40分。遊覧船をおりた後は、イカの駅つくモール特製の「イカスミソフト」で海を眺めながら一服!(コクがあって美味しい…!)

「イカの駅つくモール」ではマリンアクティビティも体験できるので(要予約)、船から見る九十九湾とはまた違ったヒューマンスケールな九十九湾の魅力を体感してみるのもおすすめ(イカの駅つくモールの記事はこちら)。

イカの駅特製のイカスミソフト

ファミリーキャンプや、親子釣りにも。

楽しめるコンテンツが九十九湾には満載で、“やっぱり泊まりがけでくればよかった…!”と後悔した次第。この日も、九十九湾内にある野営場では、キャンプやバーベキューを楽しむ家族連れで賑わってた(みんな準備がいい…)。

ちなみに、釣り好きの同僚によると、九十九湾は釣り場が整備されていて、海も穏やかなので、親子で釣りを楽しむのにも向いているそう。また陸上の植生の多様さから、イソヒヨドリやメジロなど様々な鳥が見られるするため、バードウォッチングスポットとしても密かに人気だとか。

九十九湾に面した野営場

海洋生物の不思議に、人の力が及ばないところで育まれた奇跡的な地形に、そして海の深さに。水族館でガラス越しに魚を見る時とも、海水浴で海と触れ合う時とも違う感覚が作動した九十九湾周遊。能登の人たちは日常的にこの感覚を隣り合わせで感じているからこそ、この“未知なるもの”に様々な形で敬意を払っているのではないだろうか。

人知の届かない能登の“ワンダー”に近くために。次回はマリンブーツと、キャンプ道具、そして釣り具をもって遊びに行くぞと決意したのだった。

この日は丸腰で来てしまったので反省!未知の世界にジャンプ!

記:柳田 和佳奈

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